波留須旅衣とビリーズの仲間たちがクラシックロングボードやハルスタビーに乗り、日本を旅しながらスタイルの確立を目指す。

ブラジルの無形文化遺産、カポエイラに学ぶ。

カポエイラを学ぶキッカケ

今から6、7年程前の話である。わたしは、北海道の帯広で仕事をしていた。その当時、子供たちがサッカーに夢中になり、近くの少年団に入団していたため、少しだけ、お手伝いをすることがあった。

わたし自身、高校時代はGK(ゴールキーパー)をしており、キーパーだけは指導できた。しかし、現代サッカーは、キーパーへのバックパスが禁止のため、キーパーでも足下の技術が必要となっていた。

キーパーしか経験がないため、ドリブルなどの足下の技術を教えてあげることが出来なかった。人にモノを教える指導者は、とにかく勉強するしかない。このため、様々なトレーニング理論や、指導者研修、そしてサッカー観戦をおこなった。

自分がここまで、指導にハマるとは正直思っていなかったが、子供たちが成長する姿が楽しみとなった。この頃、ブラジルワールドカップが開催され、子供たちと夢中になって観戦した。

特に、ブラジルの英雄ネイマールのプレイに魅了された。ネイマールのドリブルの根底にあるモノが、カポエイラのジンガということをそのとき知った。

カポエイラのジンガ

カポエイラは、ブラジル北東部のバイア州の港町のサルバドル周辺が発祥の地らしいが、アフリカ系黒人奴隷が過酷な労働を強いられる中で、自信の身を守るため、ダンスに見せかけ格闘技術を高めていた。

カポエイラの技術は、直線かつ回転系の蹴りを主体に、よけや移動、逆立ちのようなアクロバットな動きも多くある。その中で、カポエイラ技術の基礎となるのは『ジンガ』と呼ばれる足運びである。これは、左右に重心を移動させ続け、相手に動きを読まれにくくする目的がある。

カポエイラには、ジョゴと呼ばれる二人でおこなうゲームがある。蹴りやよけの応戦をしながら心理的駆け引きをする。時に遊びのようで、時に真剣勝負のようなゲームである。

ボクシングのスパーリングの様なものであるが、より心理的な駆け引きの面が強い。カポエイラは、このジョゴのなかで巧みな駆け引きを行っている。

このゲームでは、マリーシアと呼ばれるずる賢さや抜け目なさが重視される。

ブラジルのサッカーの技術には、このジンガとマリーシアが根底にある。故にネイマールの様な、狡猾で人々を魅了するプレイにつながるのだと思う。

カポエイラを体験する

子供たちのサッカースキル向上が目的であったが、家族でカポエイラを体験させていただいた。最初は、基礎のジンガを習った。見ているより想像以上にハードであった。

そのほか、よけや移動、体験的に逆立ちにも挑戦した。そして、いよいよジョゴを行う時がきた。

自信はあった。

ボクシングや格闘などの経験はそこそこあったためである。ただ、実践は違った。自分の動きの堅さや複雑な移動により、相手の動きを見失ってしまったり、大切なマリーシアと呼ばれる駆け引きなど頭になかった。

ジョゴは、相手にどこにスキがあるということを教える目的もあるようだ。家族全員ジョゴに挑戦したが、非常に楽しく貴重な体験できたと満足していた。

この体験が子供たちのサッカー技術向上につながったか解らないが、ブラジルの無形文化遺産にふれ、日常では味わうことのない経験をさせていただけ、見聞が広がったのは確かだ。

そして、個人的な話になるが、クラシックロングボードを乗る際のウォーキングには、ジンガのリズムがとてもあう。と感じている。

カポエイラ体験でお世話になった帯広のカポエイラサークルの方には、今も感謝している。

参考文献:アフロ・ブラジル文化 カポエイラの世界(細谷洋子 著)明和出版

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