オーストラリアの英雄
過去の投稿で、4年連続世界チャンピオンになったMRこと、マークリチャードについて語ったことがある。このMRが勝てなかった相手がMPこと、マイケルピーターソンだ。
MPは、ゴールドコースト・キラポイントのカリスマサーファーであった。その特徴と言えば、アウトローな出で立ちである。マークリチャードは、大会のヒート中に一度も目を合わすことが出来なかった。
MPのライディングの武器はスピードである。とにかく速い。シングルフィンでチューブライディングをメイクし、波の奥深くまで入り込む。また、マニューバーの切れも鋭く、トップでもボトムでも芸術的なターンを刻む。
MPは、言わずと知れたオーストラリアのサーフィン界の英雄だった。
伝説のカットバック
ゴールドコースト・キラポイントでのMPのカットバックは、今も伝説として語り継がれている。攻撃的ともとれる驚異的なスピードから生み出されるカットバックは言葉では表現しにくい。
しかし、あえて表現させてもらうと、波のトップからボトムに駆け降りる際は、フルレールが波に垂直に埋め込まれて、次の瞬間には逆側のフルレールが波に食い込んでいる。誰にもまねできない芸当だ。
もはや、芸術家の織りなす芸術作品だ。この伝説的なカットバックで使用していたボードがハルスタビーである。並のスピードではない。マイケルピーターソンは、波からパワーをもらうラインどりがすごい。
なおかつ、ボードの特性を最大限、発揮できる知識と技能が備わっている。一言で言うなれば、スタイリッシュだ。
そして、語り継がれる
MPの伝説のカットバックは、監督アルビー・ファルソンの作品『モーニング・オブ・ジ・アース』で見ることができる。1972年に映画化されたオーストラリア映画の代表的存在である。
この映画がオージーサーファーの精神的支えともいえる。海の中でも、コーキーキャロルやベンアイパと大喧嘩をしたり、ドラッグの影響から刑務所生活を余儀なくされる。出所後は、電気ショック治療により、人格を崩壊させられてしまった。数奇な人生を送ったMPであるが、故郷には、銅像が建てられている。
9ft以上が常識であったボードが数年で5ftまで短くなり、サーファーの意識改革が行われた過去に類を見ない激変の時代を描いている。ナットヤング、クリスブロック、ラスティーミラーにジェリーロペスと豪華面々なのだが、一番印象に残るライディングがキラポイントでのマイケルピーターソンの伝説のカットバックであることは異論の無いところであろう。